碧い月夜の夢
「あたしも、夢の中に浩司くんが出てきたんだよ」

「本当?」

「うん、浩司くんが破壊と創造の話をしてくれなかったら、あの世界を救えるなんて思わなかったかも知れない。だから、ありがとう」



 まさかお礼を言われるなんて思ってな かったらしく、浩司は一瞬、驚いた表情を浮かべて。

 それから、笑顔を作る。



「そんな話で良かったら、いつでもいいよ。それに、俺も聞きたいんだ、凛々子ちゃんが見た、あの夢の世界の話を」

「うん、聞いてくれる? 信じられないかも知れないけどね」




 あぁ、と、浩司は嬉しそうに頷いた。




☆  ☆  ☆




 一日中遊んで、夕日が沈んだらみんなで花火をして。

 後片付けを終えて帰る頃には、すっかり暗くなっていた。

 あれからサヤカと浩司に盛り立てられて、凛々子は中学の同級生達と楽しい時間を過ごす事が出来た。

 半袖の凛々子の傷を見ても、誰も何も言わなかった。

 前だったら考えられないような楽しい時間を過ごした事で少し興奮していて、気分を落ち着かせようと、凛々子は1人で砂浜を歩いていた。

 空を見上げると、満天の星空。

 そして、碧みがかった満月。

 歩いていて、凛々子は足元に、光る何かを見つけた。



「………?」



 しゃがみこんでそれを拾い上げると、それは、玉虫色に光る丸い石だった。

 じっとそれを見つめてから、凛々子はくすっと笑い、それを大事そうにポケットにしまう。

 これから少しずつ、前に進んでいくのだ。

 凛々子も、そして、テルラの人々も。

 そのきっかけをくれたのは、いつも勝ち気で、口が悪くて、どこまでも優しい心を持ったあの人。

 凛々子はふと、振り返る。

 少し右側に体重をかけ、腰に手を当ててこっちを見つめているレオンの姿が、そこにあるような気がした。

 きっとまだ、繋がっている。

 凛々子が忘れない限り。




 

 碧い月夜に出会えた、素敵な夢をーー。








【Fin】
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