君との幸せな心愛
朝の会議が終わり、保健室に行くと、宏樹が顔をやや下向きにして待っていた。
「さぁ、行こうか。桃はすぐにわかると思うけど、普通の先生とは違うから。生徒はみな友達って感じだから。」
「友達ですか?」
「うん。宏樹くんも友達だよ。よろしくね。」

教室に向かうまで「桃」「桃ちゃ~ん」とみんなが呼びかける。

宏樹はポツリと言った。「先生、すごいですね。人気なんですね。」

「桃は生徒が大事なんだ。だから、上から目線の教師は大嫌い。同じ立場で、なんでも考えたいんだよね。」

クラスに入り、桃が「伊藤宏樹君です。」とだけ紹介し、彼を窓際の前から3列目の席に座らせた。外を見れるように逃げ場を作るためだ。

それから、授業はスタートした。

びっくりしたのは、意外にも、宏樹が先ほどの態度と違って、ずっと前をむいていたことだ。ノートも綺麗にとっている。桃はちょっぴり嬉しかった。

授業後、桃は宏樹に「初めての授業、疲れなかった?」
「いえ、すごい楽しくてびっくりしました。」
「本当に?うれしいわ!」

「授業以外も桃はなんでも生徒と話すんだよ。だから、宏樹くんもなんでも話してくれてよいから。」


男女問わず、生徒から慕われてる桃を見ていて、「最初は、なんだこれ?」
っと宏樹は思ったらしい。でも、桃の授業や話しぶりなどで、みんなが桃に寄って来る気持ちがわかってきたんだ・・・・と後に言われた。

今や、宏樹は不登校とは、無縁の生徒となり、朝、夕、職員室の桃のとこに来るのが日課になっていた。それにしても、イケメンには変わりない。宏樹の父親の姿とかぶってくる。

宏樹は学校一のイケメンといわれるようになっていた。それでももう、桃のような対応をする姿を見て、「あまり気にならなくなった。」と言っていた。

本当によかった。
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