野球嫌いなあたしと、先輩。
「俺は数学の教科書貸してもらいにきたんですけど、誠二郎さんは?皆噂してましたけど、もしかして本当に付き合ってるとか……?」


「まだ、付き合ってはねーよ」


「まだ?え……?」


「お前もういいから。この教科書持って帰れ!」


「あ、邪魔してすいません!……誠二郎さん……夢って本当に優しい子だから、よろしくお願いしますね」


ニコッと笑って教室から出て行った。


何が、よろしくお願いいたします……だ。


夢と智と望姉ちゃんの関係性を知った今、この少しの智の言葉がどれだけ胸をえぐる刃なのか、痛い程分かった。


こんなのがずっとか?

だからお前、俺の前だってのに……強がることも忘れて辛そうな顔してんのか?


……耐えらんねーよ。
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