野球嫌いなあたしと、先輩。
「それも全部分かった上で、望姉ちゃんのこと好きだった」


「前に夢が言ってた智の好きなとこって、絶対に諦めない所だったよな?“どんなに願っても叶わないことだって、ずっと諦めてない”。あの言葉がやっと繋がった」


あたし、そんなこと言ったっけ?

ほんとにコイツ……人をよく見てるよね。


「あたしバカだからさ、望姉ちゃんを勝手に悪者にして、大嫌いって思い込んで」


「それで?」


「どうしたらいいか何も分からなくなって。智の好きなものは全部嫌いになろうとしてた」


あの頃の自分は、今思い返しても大嫌い。

中学生なのに大人ぶって強がってたただのバカ。


「なるほどな。その一つが野球ってことか」


呆れて笑うでもなく、皆川誠二郎は低い声で呟いた。
< 63 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop