深空-あたしは生きている-
「ねーえ、君何歳?」
だからかな?
止まっていた車から発せられた声に、あたしは気づかなかったんだ。
「聞いてンじゃん~」
彼らはあたしを取り囲んだ。
思わずイヤホンを外す。
…逃げなきゃ。
ヤバイ雰囲気が漂っていて、あたしは走り出そうとした。
「待ってよ、なんで逃げるの?」
気味の悪い低い声……。
捕まれた腕に、父親の面影を見つけた。
身近にはいない、大人の男。
記憶にあるのは、笑いながら狂ったように娘を殴り付ける、悪魔のようなあの男―…。
「…はなして…」
やっと出た言葉がそれ。
もう無理だと思った。
恐怖で体が動かない。それにいくら走っても、きっと車で追い付かれちゃう…。
どこかで、冷静なあたしもいたと思うんだ。