君へ
嘉穂が足を止めたのは、屋上だった。
うちの学校は屋上への立ち入り禁止になってるから、うちと嘉穂以外は誰もいなかった。
「空を返して」
嘉穂の第一声がそれだった。泣きながらうちに
「空を返して」
って。返してって言われても……
「なんでうちに言うの?空のことを振ったのは嘉穂だよね?」
昨日メールで空、『嘉穂に振られた』って言ってたよ?
「それは………」
~昨日の帰り道~ *嘉穂*
「嘉穂、俺蓮とアド交換することにした。嘉穂には秘密にしたくないから伝えとくな!」
「いや!蓮とアド交換なんて………」
「なんで別によくね?」
「だめだよ。他の女子ならまだしも蓮はだめ。」
空が困ってるのは分かってた。けどどうしても蓮はだめだった。だって………
「もし、蓮とアド交換するなら私空と別れる。」
空ごめんね?わがまま言って。でも、蓮はだめなの。蓮だけは。
困ったように笑ってた空が何かを決意したような顔をしたのを見たとき、嫌な予感がした。いや、今まで微かにあったのが大きくなったって言った方がいいかな。
「わかった。別れよ。」
「え!?」
予想はしてたけど、期待もしてた。空ならうちを選んでくれるって。
「俺は、蓮とアド交換するから、そのために嘉穂とは別れる。ごめんな」
「………」
ショックだった。けど、いずれこうなると思ってた。それが速くなっただけ…
「わかった。」
泣いちゃだめだ。泣いたら空を困らせる。
「短い間だったけど、空と付き合えて楽しかったよ!」
ちゃんと笑えてたかな?
「俺も楽しかった。ありがとな」
「じゃ、もういくね。バイバイ」