君へ
朝の屋上
あの日、嘉穂に別れた理由を聞いた屋上。
空への想いを消そうと誓った屋上。
そこで、うちは空に想いを告げる。
ガチャ
「蓮?」
現れた人、間違うはずがない声。ずっと聞きたかった。
他の人じゃなくて、宮田 蓮に向けてくれる優しい声。低くて、太いでもすごく優しい声。
「空」
「どうした?昨日急にメール来たかと思ったら、明日の朝屋上で待ってるって。返事してもかえって来ないし。」
「ごめんね。………空に伝えたいことがあるの」
嘉穂ごめん、空への想い消すことできなかった。
「空、うち っ!……」
最後まで言えなかった。だって……
「蓮!!!」
何が起きたのか理解するのに時間がかかった。
あわてて駆け寄ってくる空と、逃げ出していく嘉穂。
《うち嘉穂に刺されたんだ。》
理解したときにはもう嘉穂は屋上から出ていった後だった。
うち、死ぬのかなー?
なら、せめて空に好きって伝えなきゃ。
「空……うち空の…こと…」
そこで、意識がなくなった。
最後の記憶は空の悲しげな目と、雲ひとつない青い空だった。
空、そんな目しないで。
うちはその悲しそうな目の訳が知りたかった。知って助けてあげたかった。
空……