ウンディーネは、この世に生を受けた瞬間から世界に息吹を吹き込むため、一生駆け抜ける存在。
ウンディーネは命を運び、時間を運ぶ。
そんな彼女が生を受けたときに聞いた「声」。
暖かい、その「声」によく似た声の持ち主、人間とウンディーネは出会う。
そして、ある事件でのウンディーネが取った行動――。
とてもストレートなお話で、展開も意外性は特にない。けれど、そういった物語だからこそ、読み手の心を動かせるのは難しいと思います。
しかし、作者さんの書かれる何気ない会話だったり、情景描写だったり、日常にちりばめられているような一場面の描写に温かさと強さを感じます。
ラストの、願い事を聞かれた場面で、人間になることも、人間の男性と恋を実らせることもできたはずなのに、それでもあの選択をしたウンディーネが愛おしくてたまりません。
素敵なお話です