親友を好きな彼



「だけど、聡士は私にそれほど執着がある様には見えないよ?実は私たち…、関係があるんだけど…」

改めて言うのは、本当に恥ずかしい。

「知ってる。聡士から聞いてたから」

「そ、そう…。その関係を終わらせたいと言ったら、あっさり引いてくれたもん」

知っていたのか。

前回の飲み会で、一香と聡士が席を空けた時、私に探しに行って来いと言った意図の意味が分からない。

だいたい、そうやって琉二が意味深な事を言ったりするから、混乱していった節もあるのに。

そんな思いが顔に出たのか、琉二は少し嫌味ぽく言ったのだった。

「まあ、いろいろ知れたから、考えようとは思ったろ?」

「どういう意味?」

「誰が好きか、誰と付き合いたいか。もし考えなければ、聡士と中途半端な関係が続いていただけだぜ?」

はいはい。

そうやって、恩着せがましい事を言うのね。

どこか納得出来ないまま、それでも黙ってカプチーノを口にした。

琉二がお勧めと言った通り、ほどよい甘さと苦さがあり美味しい。

聡士が好きな物と言われて、この味は忘れられそうになかった。

「まあ、話を元に戻して。由衣が知ってる聡士と一香の関係ってどこまで?」

「それくらいお見通しなんでしょ?二人に体の関係がある事。そしてこの間の飲み会でもキスをしているのを見た」

あっさり言うと、琉二は顔色ひとつ変えず答えたのだった。

「そこまで知ってるなら、話は早いよな。それも、すべては聡士がフラフラしているからだよ」

「聡士が?」

「そう。あいつは、一香への未練を断ち切りたいのに出来ない。それは、由衣の気持ちを掴みきれないから。それが一番の原因」

待ってよ。

聡士の中で、一香より私への気持ちの方が強いの?

「本当に、信じられないことばかりなんだけど…」

すると、琉二は少し考えてから言ったのだった。

「こうなったら、一香へ直接聞くか?お前たち友達なら、それくらい腹を割った方がいいよ」

「えっ!?だって、琉二が教えてくれるんじゃなかったの?」

「そう言ったって、お前全然信じないじゃん」

これには、反論する余地がない。

「俺は、一香も聡士も大翔も大事な友達で、みんなに幸せになってもらいたいんだよ」

「うん…」

「だけどさ、由衣の事も友達だと思ってる。まだ知り合って日は浅いけど、お前にも幸せになって欲しいからさ」

そう言うと、琉二はカプチーノを飲み干した。

「ちょうど良く休みだし、一香も家にいるんじゃねえ?俺から聞いたって言っていいから、ちゃんと話して来いよ」

ほとんど強引な話だけれど、これもいい機会かもしれない。

ゆうべの大翔の事もうやむやなままだし、ここは友達だからこそ、ちゃんと聞かなければいけないのかも。

それで、一香を失うことになっても仕方ない。

そう覚悟を決めると、いてもたってもいられなくなった。

「ありがとう琉二。一香に連絡を取るから」

「ああ。いいニュースが聞けるのを楽しみにしてるよ」

そうだ。”あれ”も返さなきゃね。

一香に…。
< 107 / 138 >

この作品をシェア

pagetop