親友を好きな彼
大翔に対する復讐?
「どういう意味なの?」
「聡士はね、大翔の彼女が由衣だって事を知っていたんだよ」
「え…?」
ちょっと待ってよ。
話が混乱してくるじゃない。
「大翔は私の話なんて、友達にはしていなかったって…」
「もちろん、付き合っている頃にはね。だけど、別れた後に話したみたいよ」
「そうなの…?」
「うん。聡士がね、大翔に詰め寄った事があったの。彼女と別れたんなら、私との事を少しは真剣に考えたらどうだって」
そういうの聡士らしい。
きっと、一香の為に必死だったんだ。
「そしたらね、大翔が言ったのよ。元カノと友達である私とは、付き合えないって」
「それで私の事を知ったの?」
「うん。私はね、由衣って子と友達なんだって、みんなには話していたから。大翔、内心では驚いていたんじゃないかな?」
確かに、こんな狭い世界でみんなが繋がっているなんて、思いもよらなかっただろうし。
「そういえば、一香から聡士たちの話は、聞いた事がなかったね」
苦笑いをすると、一香もぎこちない笑顔を向けた。
「あの頃は、仕事でいっぱいだったし、幸せそうな由衣には話辛かったんだ。それに、大翔との事は、私が会社を辞めた後だったから…」
「あっ、そうか…。もう一香は辞めていた頃よね」
ちょっとずつ、ボタンが掛け違えてきて、こんな風になったのかもしれない。
「ねえ、一香。聡士の復讐は何なの?」
そう聞くと、一香は表情を曇らせた。
「由衣が大翔の元カノだって知っていたから、大翔へのあてつけで由衣に近付く事よ」
「え…?どういう意味?」
「聡士は偶然、私たちの会社と繋がりのある人と知り合ったの。それを利用して…。仕事で認めさせて、ヘッドハンティングを頼んだのよ」
「その為だけに?」
だからって、本当にヘッドハンティングをしてもらえるのだから、聡士という人は本当に凄い。
普通は、そんな思い通りにはいかないと思うけれど…。
「性格には難アリだけど、あいつ語学力はあるし、頭はいいから」
一香はようやく、普通に笑った。
「由衣、聡士は最初はそういう理由で近付いたけれど、今は全然違うよ。それだけは言える」