親友を好きな彼
「それは…」
すると、それまでのどこかぎこちない空気は吹っ飛んで、大翔は顔を赤らめた。
「単に、独り占めをしたかったんだ。聡士は、特に学生の頃は女癖が悪くてさ」
「えっ!そうなの?」
そういう気配は薄々感じていたけれど…。
思わず食いついた私に、大翔は慌てて弁解をした。
「いや、今より若いからさ。あいつモテるし、由衣を誰にも取られたくなくて、つい隠していたんだよ」
申し訳なさそうな顔で、大翔は私を見た。
なるほど。そういう事だったんだ。
だから、私の友達とは会ってくれていたのに、大翔の友達には会わせてくれなかったんだ。
「だけど、今は違うよ」
「一香と出会ったからでしょ?聡士にとって、一香は本気で好きになれる人だったのよ」
その一香を諦めるなんて、聡士に本当に出来るのかしら。
そんな心を見透かすように、大翔は言ったのだった。
「その一香を忘れられるくらい、聡士は由衣に惹かれてる」
「復讐で近づいたのに?」
「それも聞いたのか…。そうだな。最初はそうだっただろうけど、俺もそれを知っていたから、初めは絶対に由衣を聡士に取られたくないと思ったけど…」
「知ってたの!?」
「知ってたよ。あいつとは何年友達やってると思ってるんだよ。だから、俺も必死だったけど、いつしか聡士は本当に、由衣を見始めていたと思うよ」
何も知らなかったのは私だけって事?
こうやって、みんなが話してくれなければ、今でも一人で悶々と考えるしかなかったんだ。
「今度は聡士の番だな」
「え?」
「ちゃんと、向き合う相手」
「う、うん…」
それは、もう少し後にしよう。
今は…。
まだ、心の整理がつかないから。
そして、大翔の家を帰る間際、こうも言われたのだった。
「聡士、夏にはアメリカなんだろ?だいぶ悩んでるらしい。一香にも相談したらしいから」
「悩む?」
「そう。由衣と離れることが、相当あいつには引っかかることらしいから」
そうだ。
もう半年もしない内に、聡士はアメリカへ行く。
そんな時に、私が告白をしてもいいの?
自分の気持ちに正直になってもいいの…?