親友を好きな彼


「由衣!体もう大丈夫なの?」

久しぶりに会社へ行くと、亜子が真っ先に駆け寄ってきた。

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう」

「ううん。それより、プロジェクトが大成功だったみたいね。会社もその話題で、まだ持ち切りなのよ?」

明るい笑顔で亜子はそう言った。

そんなに成功だったんだ。

結局、倒れて参加出来なかった私は、一人出遅れている。

それにしても、さすが聡士。

仕事を完璧にこなす能力には脱帽だ。

「あ、そうだ。亜子、ちょっとだけいい?」

「うん?大丈夫よ」

給湯室へ行くと、聡士との事を報告したのだった。

ただ、一香と大翔の関係などは話さず、それぞれのわだかまりが溶けてうまくいったとだけ話した。

「そう!それは良かった。当人同士が良ければ、それでいいのよ」

亜子は、心底ホッとした様に私を見た。

「だけど、遠距離恋愛になるわね」

「うん。それは仕方ない。私も仕事を辞めるわけないはいかないから」

結婚をするわけでもないのだし、一緒にはついていけない。

だけど、それでもいい。

そうやって、自立できる二人でいたいもの。

「結婚するわけじゃないから、わざわざみんなに報告するつもりもないんだけど…。でも、いつかは知られる事だから、亜子には真っ先に言っておきたかったの」

「ありがとう。私は応援するから。それにしても、私の推理は間違ってたのかな?聡士くん、何か裏があってこの会社に来たと思ってたのに」

口を尖らせた亜子に、思わず笑いが出た。

「当たらずとも遠からずってやつよ」

「何よそれ」

「そういう事。だけど、もう心配しないでね。私たちは大丈夫だから」

そう言った私に、亜子は穏やかな笑みを浮かべた。

「うん。応援する。いっぱい、聞かせて。ノロケ話を聞くのは好きだから」

ようやく訪れた穏やかな日々。

夏が来るまでは、まだまだ時間がある。

聡士がアメリカへ発つまでの間、二人の時間を大事に過ごそう。

甘い甘い時間を、たっぷりと…。
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