親友を好きな彼
朝から降り始めた雪は、止む事もないまま、夜にはネオン輝く街中を銀世界に変えていた。
そのせいか、道行くカップルのテンションが妙に高い。
クリスマスというだけでも特別な日なのに、この一面の雪景色は、きっと恋人同士の距離をますます縮めるものに違いなかった。
「佐倉!お疲れ。今日はどうだった?」
約束通り、嶋谷くんとは会社近くのカフェで待ち合わせをすると、そのまま彼の知る店へと向かっているのだった。
「まあまあかな…。年末だし、見込み客は契約更新済みだし、それ以外は年を越しそうよ」
仕事終わりに二人きりで会う事に、少しの緊張を持っていたけれど、社内の時と変わらない雰囲気に、どこか気が抜けてしまう。
でも、その方がいいか。
彼なりに、変な空気にならないよう、気を遣っているのかもしれないし。
「それより嶋谷くん、連れて行ってくれるのはどんなお店?」
雪が積もった道は、人の往来ですっかり氷と化していて、油断をすると滑りそうだ。
ましてや、ヒール靴を履いているせいで、足元が取られる。
嶋谷くんに話しかけながらも、意識は足元にいっていた。
「普通にフレンチの店なんだ。だけど、ワインがうまいで評判の店でさ…」
「そうなんだ。楽しみ」
フレンチの店と聞いて、ちょっとだけテンションが上がる。
飲みに行こうというから、居酒屋かと思ってしまった。
普段ならそれもいいけれど、やっぱりクリスマスなら雰囲気を味わいたい。
そんな事を考えていると、
「なあ、佐倉。手を取っていいか?」
「え?」
そう言うとすぐに、嶋谷くんは私の手を握ったのだった。