親友を好きな彼
雪は止んでいたけれど、すっかり銀世界に覆われた街では、カップルがお互いに寄り添いながら歩いている。
私たちが本当の恋人同士なら、どれほどロマンチックだったかと思うけれど…。
嶋谷くんは今度は何も言わず、再び私の指に自分の指を絡めてきたのだった。
ヤバイ…。
なんだか、変な空気になりそう。
真っ直ぐ伸びる通り沿いの木々には、色とりどりの電球が飾られ、ビルにもまるでラッピングをされているような装飾が施されている。
道行くカップルが足を止め、それらを眺めていた。
それにしても、彼氏が彼女の頭を撫でていたり、今にもキスをしそうなくらいの至近距離で話していたりと、刺激が強すぎる。
絡められた手を振りほどく勇気もなく、半分酔いが回っているせいか、この“擬似恋人同士”をどこか楽しく感じている自分もいた。
それに、何度も香る香水が、大翔と重なって仕方ない。
「本当に綺麗ね。去年も一昨年も、イルミネーションを見る事はなかったから」
「本当だな」
そう。大翔と別れてからは、そんな物を堪能したいなんて心の余裕がなかった。
こうやって嶋谷くんと二人で眺めていると、やっぱりこの二年間は寂しかったんだと改めて気が付いた気がする。
「なあ、佐倉。少し休まないか」
しばらくして、呟くように嶋谷くんが言ってきた。
「休む?」
その言葉に、今日一番、心臓が鼓動を打つ。
その意味が何かを、分からない年齢じゃない。
彼とのそんな関係は、全然望んでいるわけじゃなかったのに…。
それでも私は、
「うん…」
と、返事をしてしまっていた。
私は今夜、彼と…。