親友を好きな彼
そうだ。
ずっと気になっていたのは、一香のしつこいくらいのこの言葉だ。
紹介したいと言った時から、必要以上に私たちがうまくいく事を望んでいる。
「ねえ、ちょっと待ってよ。一香と聡士って、かなり仲良く見えるんだけど、どうして私とそんなにくっつけたがるの?」
すると、それまでの笑顔が消えて、少し恥ずかしそうに答えてくれたのだった。
「実はね、聡士と私は大学を卒業してすぐ知り合ったんだけど、ずっと告白されてたんだ」
「告白…?」
まるで、心臓に何かが突き刺さった様な痛みを感じる。
緊張は一気に高まっていった。
「うん…。聡士ってね、ずっと私の事が好きだったんだって」
「好きって…。い、一香は?」
震える声を絞り出し、ようやく聞けたのはそんな単純な事。
注文して持ってきたコーヒーが冷めるのも忘れて、ただ一香を真っ直ぐ見つめていた。
「私も、もちろん好き。でも、それは友達としてで…。でも、とっても大事な友達なの!」
どこか苦しそうに言う一香に、違和感を感じる。
「じゃあ、何でその人を私に紹介するのよ?」
「だって…。他の女に取られるくらいなら、由衣とくっついて欲しかったんだもん」
めちゃくちゃな理由に、半ば呆れてしまう。
「だけど、聡士は一香が好きだったんでしょ?そんなにうまくいくか…」
ため息混じりに言うと、一香は小さく首を振った。
「違う…」
「違うって?」
「聡士は今でも、私が好きなのよ。昨日も、結局私の家に泊まったし…」
「え…?」
頭を殴られる感じって、こういう事を言うのだと知った。
座っているはずなのに、まるで崩れ落ちそうになる感覚。
絶句した私に、一香は目に涙を溜めて言った。
「私たちね、体の関係もあるんだ。それも、今でも。でも私は、それが本当に嫌なの。だからお願い。由衣、助けて…」