親友を好きな彼


助けてって…。

助けて欲しいのはこっちよ。

泣きたいのだって私も一緒。

「ねえ、一香。よく分からないけれど、私と聡士が仮に付き合ったとして、それで解決する事なの?」

「分からない…」

「分からないって…。そんな…」

二人に体の関係がある事実でさえショックで、しかもそれが続いていると分かっただけで、今の私は気を失いそうなくらいなのに。

煮え切らない態度に、少しイライラし始めた時、ポツリポツリと呟く様に一香は口を開いたのだった。

「聡士の事は、本当は好きなのかもしれない。だから、体の関係も拒めなくて…」

「それなら、どうしてその気持ちに素直にならないのよ」

もしそうなってしまったら、確実に聡士の中での私は消える。

それは、本当に辛いけれど、彼に本気でハマる前に抜けられるいいチャンスかもしれない。

そう思ったけれど、“コト”はそんな単純なものではなかったのだった。

「私にとって、聡士は誰より一番大事な人なんだけれど、肝心な部分で信用していないんだ」

「肝心な部分?」

すっかり元気さを失っている一香は、小さく頷いた。

「私の事を好きとか言いながら、あいつ他の女ともヤッてるみたいなんだよね」

「えっ!?」

思わず我を忘れて声を上げてしまったけれど、一香は気に留める事はなかった。

その女って、まさか…私?

それまでのショックが吹っ飛び、心当たりのある私は冷や汗ものだ。

「どうして、分かるの?」

恐る恐る聞いてみると、一香は少し恥ずかしそうに答えた。

「聡士のベッド…。明らかに、あいつとは違うシャンプーの匂いがする時があるのよね」

「シャ、シャンプー!?」

思わず髪を触りそうになり、ホッとため息が漏れた。

良かった。

今日は束ねて来たのだった。

それにしても、さすが一香も女だ。

鋭い…。

「だからね、そういうヤツだから、信用しきれなくて…」

「だったら、何で私に紹介するのよ」

そんないい加減な人を、紹介しようとしていたんだろうか?

すっかり冷静になり、心の中で突っ込みを入れてみる。

すると、一香はまたも悩ましげな表情をした。

「由衣…。私ね、本音では聡士が好きなんだよ」


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