親友を好きな彼
「本音では…好き?」
「うん。認めたくないけど、突き詰めたらやっぱり好きなの」
それじゃ、二人の想いは一緒なのに、どうしてすれ違っているのよ。
「だけどね、怖いんだ。聡士と付き合っていく事が…」
「怖い?どういう意味?」
「友達でいる方が、確実にずっと側にいられるから」
一香の言葉に、ただの“友情関係”を望んでいるのではないと分かった。
本当に失いたくないんだ…。聡士を…。
「付き合ってみると、それまでとは違ったお互いの欠点が見えたりするでしょ?そうやって、気持ちが冷めるのが怖い…」
「だから?だから、聡士とは付き合わないの?」
そう聞くと、一香は頷いた。
「友達としてなら、変わらない気持ちのままで側にいられる。でもね、あいつに彼女が出来れば、邪魔をする気はないんだよ?」
だから、私とくっつけたい。そう言われるのが分かって、頷いた。
「由衣、無理強いはしないから、せめて前向きに考えて?」
「うん…」
前向きも何も、もうハマりかけている。
一香と聡士の関係に、こんなに傷ついているのだから。
やっぱり、ベッドから香る匂いは、一香の香水だった。
落ちていたネックレスも…。
だけど、同じ様に一香も“私”の存在に勘づいていたんだ。
もし、それがなければ、一香はもっと素直に、聡士に気持ちを打ち明けるのだろうか?
私が邪魔をしているの…?
「ねえ、一つ聞いていい?一香」
「何?」
「ゆうべも…?聡士と…?」
それを聞いてどうするのよ。
余計に傷口を広げるだけじゃない。
「うん…。ヤッた…」
ああ、やっぱり…。
私が眠れない夜を過ごしている間、二人は抱き合っていたんだ。
どれくらい、愛おしい気持ちで一香を抱いたの?
私とは、きっと全然違うんでしょ?
本当に抱きたいのは一香で、私は慰めに過ぎない。
聡士に抱かれる度に感じていた“誰か”は、一香だったんだね。
私の親友…。
私の親友だったなんて…。