親友を好きな彼
再会
二年ぶりの大翔は、前髪が少し顔にかかり、相変わらずのがっしりとした体格だけれど、どこか甘さも漂わせていた。
でも、基本は変わっていない様に見える。
優しくて、全てを包み込んでくれる感じ…。
そういう雰囲気は、まるで変わっていない。
「佐倉さん知り合い?」
有坂さんが不思議そうに言った時、
「僕の友達なんです」
と、すかさず聡士が答えた。
「そうなんですか。すごい偶然ですね」
笑顔の有坂さんが、私たちをイスに座る様に促した時、大翔も小さな笑顔を浮かべ言った。
「佐倉さんとも知り合いですよ」
「ああ、そうですか。二人ともお知り合いなら、今回の仕事はより楽しいかもしれないですね」
有坂さんは楽しそうに笑いながら、打ち合わせを始める。
といっても、どうやら大翔に一任しているらしく、書類上の手続きだけを済ませると、『プロモーションを楽しみにしています』と言って出て行ったのだった。
「じゃあ、ここから先は三人で」
笑顔を絶やさない大翔は、私たちが用意した資料に目を通している。
ああ…、何も変わっていない。
髪型が変わっても、癒される笑顔も、温かく低い声も何もかも…。
すっかり仕事を忘れ、ただ大翔に目を奪われていた。
別れても、こうやって大翔に再会すると胸がときめく。
だけど、私がそんな調子のいい事は言えない…。
「大翔、お前いつからここで働いてるんだ?」
静かな部屋で、それに似つかわしくないくらい不機嫌な口調で、聡士は言ったのだった。
「半年前だよ。お前と同じヘッドハンティング」
資料から目を離さないで、大翔はごく当たり前の様に答えた。
「そんな話、初めて聞いた」
ふて腐れた様な聡士に、呆れた笑顔を浮かべ大翔は顔を上げた。
「いちいち報告するものじゃないだろ?」
そんな大翔の言葉に、聡士はさらに膨れている。
二人のやり取りを見ていると、意外なくらい聡士が大翔に弱い事が分かって笑えた。
こんな関係なんだ。二人って…。
そんな新鮮な気持ちで見ていると、ふいに大翔と目が合った。
二年ぶりに重なる視線。
そらせないでいると、大翔は笑顔だけを私に向け、また資料に目を落とした。
その仕草に、二年前を思い出す。
聡士が隣にいる事も、今の私は忘れてしまっていた…。