親友を好きな彼
「みんなに改めて紹介しよう。嶋谷聡士(しまたに そうし)くん。今日からこの法人一課で働く事になった」
上司の紹介に、オフィス内はにわかにざわつく。
27歳という若さでのヘッドハンティングだけでも目立つのに、このルックス…。
さらに、穏やかな雰囲気を醸し出していて、初対面でもこの場所に完全に溶け込んでいる。
「佐倉」
そして、いつの間にか彼に見入っていた私は、上司の呼びかけにも気付かなかった。
「由依、由依ってば」
「えっ?あ、はい!?」
隣で立っている亜子に肘を突かれ、ようやく我に返ると、彼は私に目を向け、さらに口角を上げたのだった。
「佐倉と同じグループに所属する事になったから。いろいろと教えてやってくれ」
「えっ!?教える!?」
朝礼中に上の空だった私に呆れた顔を向けて、上司はさらに顔を歪める。
「そうだ。教えるといっても、顧客情報やそんなものだがな」
「は、はい…」
私が、この人に…?
少し目を向けるとその人は、低いけれどどこか甘い声で言ったのだった。
「よろしくお願いします。佐倉さん」