親友を好きな彼


「う…ん」

いつの間に眠っていたのか、頭が重く感じて目が覚めた。

「起きた?」

目の前には、優しく微笑む聡士がいる。

私、結局眠っていたんだ。

「今、何時?」

ゆっくり起き上がろうとすると、聡士が腕を引っ張った。

「色気のない事を言うなよ」

「だって…」

「今はもう2時。真夜中だよ」

聡士は布団の中で、ぎゅっと強く抱きしめる。

お互い下着一枚すら、まとっていないけれど寒くなかった。

「もうそんな時間なの?」

「そうだよ。明日の朝は家まで送るから、今夜はこのまま眠ろうぜ」

「うん…」

結局、こんな事になってしまった。

携帯の着信も確認出来ないまま、聡士の胸に顔を埋める。

昼間は大翔との再会に浮かれていたくせに、なんて自分勝手なんだろう。

それよりむしろ、流され過ぎって言葉がピッタリかもしれない。

そんな事を考えていると、優しく頭を撫でながら聡士が言った。

「隣で眠ってる由衣が可愛かった」

「やめてよ。恥ずかしいじゃん」

「本当だって」

そうして抱きしめている腕を強める。

「おやすみ」

聡士の寝息が聞こえ始めたのは、それから数分後。

今度はこちらが眠れなくて、聡士の寝顔をしばらく見つめていた。

ほどよい厚みの唇。

その唇で、一香にキスをしないでよ。

そう思う自分がいる…。

すっかり目が覚めてしまい、静かにベッドを降りると、やっと携帯を確認出来た。

一件の着信は、思った通り大翔。

そして、一通のメールもきていた。

『ごめん。特に用事はなかったから、着信は気にしないで』

という大翔からのメールだった。

「大翔…」

そうだった。

大翔は本当に気遣いをする人で、電話の事も気にしたに違いない。

私が嫌で取らなかったとか、思っているんじゃないの?

だから、こんなフォローのメールを送ってきたとか?

「ごめんね…」

すぐにかけ直したい衝動を抑えると、涙が出てきた。

「私、何をやってるんだろう」

気持ちが浮ついている自分が嫌。

聡士にも惹かれて、大翔にも懐かしさを覚えて…。

最低だ、私。


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