親友を好きな彼


「素敵~!想像以上!」

依頼していた3Dの演出は、期待以上の出来映えで、試しに上映してみると興奮しきれずにはいられなかった。

「これで、うまくいくといいな」

隣で嬉しそうに眺める大翔に、私も強く頷いた。

「大翔、ありがとう。当日までよろしくね」

「ああ。こちらこそ。何かあれば、遠慮なく言えよ?」

「うん…」

変わらないな、この優しさ。

それに安心感も。

「大翔…。ゆうべはごめんね」

「電話の事?気にするなよ。そんなに謝られたら、何かあるのかと思うじゃん」

「だって…」

変に勘ぐったりしないんだね。

それも昔から同じ…。

「それより由衣、今夜もし大丈夫なら、メシでも食いに行かないか?」

「えっ!?」

大翔とご飯!?

私の驚き様に、大翔は少しビックリしている。

「いや、難しいならいいんだ。久々に会えたから…」

「あ…、じゃあ行く。というか行きたい」

そう答えると、大翔は嬉しそうに笑顔を大きくした。

「良かった。なるべく遅くならない様にするから」

「ありがと…」

一緒にご飯だなんて懐かしくて、本当にタイムスリップしそう。

「じゃあ、また後でな。7時頃には電話出来ると思うから」

「うん」

大翔と夜の約束をして別れると、ホテルを出た。

今日は浮足立ちっぱなしだ。

どこに行くのかな?

付き合っていた頃は、よく行く店があったけれど、今夜もそこかな…。

そんな事を考えながらしばらく歩いていると、駅前に聡士の姿が見えた。

「あれ?あんな所に」

この辺りにアポがあるの?。

それにしても、誰かを待っている風だ。

辺りを落ち着きなく見渡し、時々携帯も確認している。

その様子を遠くから見ていると、聡士の表情が明るくなった。

どうやら、やっぱり誰かを待っていたらしい。

「誰と約束?」

視線の先を合わせると、そこには手を振りながら小走りで駆けて来る一香がいたのだった。

「い、一香…」

待ち合わせは一香だったんだ。

何で?

午後はアポで埋まっているって…。

だから、大翔の所に行けないって言っていたじゃない。

聡士は、走ってやって来た一香の頭を軽く小突くと、二人は駅前のビジネスホテルへと入って行ったのだった。


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