親友を好きな彼
「さっさと帰ってよね!」
ほとんど無理矢理、聡士は部屋へ転がり込んできた。
「へぇ。お前の部屋って、雑誌にでも出てきそうな部屋だな」
こちらの言う事には完全に無視で、辺りを珍しそうに見渡している。
「ちょっと聞いてる?すぐに出て行ってよ!」
「けっこう有名メーカーで揃えてんだな。由衣は、見た目から入るタイプだろ?」
「は?何を言ってるのよ」
そうやって話をはぐらかして、部屋に居座る気なのね。
「薄々気付いてたけど、お前、男も見た目から入るタイプだろ?」
「何、言ってるのよ…」
バカにする為に来たわけ?
「見た目、自分にも相手にも求めるもの。中身より見た目重視ぽいなと思ったんだよ」
何よ。
一香とでも比べてるわけ?
「オシャレなマンションに住んで、オシャレな家具で揃えて…」
「それのどこがいけないのよ!」
つい声を荒げた私に、聡士は冷ややかに言った。
「だから、フラフラするんだろ?俺に流され、大翔に流され」
悔しい。
あながち間違っていないだけに、悔し涙がこぼれる。
「言いたい事がそれだけなら帰ってよ」
昼間、一香とケンカでもしたわけ?
自分だって同じじゃないと言ってやろうか。
そんな気持ちでいると、聡士は強引にキスをしてきた。
「やだ…。やめてよ…。誘わないでよ」
言っている事と、やっている事がめちゃくちゃだ。
「流されるなら、俺だけに流されろよ由衣」
「い、意味わかんない」
舌を吸い付く様に絡ませながら、大翔はキスを続ける。
意地悪な事を言うかと思えば、こんな風に心を掻き乱して…。
何が本心なの?
息が乱れ始めると、聡士の手が胸へと伸びてきた。
「ちょっと…。これ以上は、本当にやめて」
一香を抱いた後に、私を抱かないでよ。
「やめて?体は、そんな事を言ってないのに?」
どうして、そんな意地悪ばかりするのよ。
お願いだから、振り回さないで。
聡士の言う通り、フラフラしてしまう。
情けない私だから…。
ああ、また今夜も、聡士の腕の中で甘い声を上げるんだ。
どうすれば抜けられる?
聡士から、抜けられる…?