親友を好きな彼
気が付いたら、すっかり日付も変わっていて、聡士が隣で私を抱きしめている。
「どうして、私の家にまで来たの?」
汗が引いた体は、少し寒さを感じるものの、それを感じさせない様に、聡士が強く抱きしめているのが分かる。
「人をストーカーみたいに言うなよ。近くに来たから連絡しただけ」
目を閉じたまま、ぶっきらぼうに答えている。
少し眠たいみたいだ。
のんきなものよね。
こっちは、少しも眠れないというのに。
「その割には、ずいぶん長い時間待ってたのね」
「うるさいな。可愛くない事言うなら、さっさと寝ろよ」
「何よその言い方。ここは私の家よ?聡士が出て行って」
初対面の時から、距離を縮めるのが得意な人だとは思っていたけれど、最近は“図々しい”の域に入っていない?
これが彼氏なら…、ううん違う。
私を好きでいてくれる人なら嬉しいのに。
「ホント、可愛くなくなってきたな。最初の頃と全然違う」
目を開け、私を恨めしそうに見た。
「それは、こっちのセリ…」
と言い終わる前に、聡士が乱暴に唇を塞いできたのだった。
「ん…、聡…!」
軽く抵抗すると、すんなりと唇を離してくれる。
「お前が静かにしないからだろ。まだ可愛くない事言うなら、もう一回キスするぞ?」
キスが嫌なんじゃないよ。
宙ぶらりんの関係と、ケジメがつかない自分が嫌なの。
どこかで、聡士の温もりを感じたい自分がいるのも確かだから。
「お?やっと静かになったな。おやすみ」
「嫌なんじゃないよ…」
「ん?」
「聡士にキスされるのが嫌なんじゃないよ。おやすみ」
照れ臭さを隠す為に、目を閉じ顔を聡士の胸に埋めた。
「お前、それ反則」
「え?」
私を胸から離すと、聡士は再びキスをしてくる。
「せっかく寝ようと思ったのに、寝かせられなくなった」
「あ…」
そして、また聡士は私を強く抱いたのだった。
私のベッドもよくきしむって、初めて知ったよ…。