親友を好きな彼


気が付いたら、すっかり日付も変わっていて、聡士が隣で私を抱きしめている。

「どうして、私の家にまで来たの?」

汗が引いた体は、少し寒さを感じるものの、それを感じさせない様に、聡士が強く抱きしめているのが分かる。

「人をストーカーみたいに言うなよ。近くに来たから連絡しただけ」

目を閉じたまま、ぶっきらぼうに答えている。

少し眠たいみたいだ。

のんきなものよね。

こっちは、少しも眠れないというのに。

「その割には、ずいぶん長い時間待ってたのね」

「うるさいな。可愛くない事言うなら、さっさと寝ろよ」

「何よその言い方。ここは私の家よ?聡士が出て行って」

初対面の時から、距離を縮めるのが得意な人だとは思っていたけれど、最近は“図々しい”の域に入っていない?

これが彼氏なら…、ううん違う。

私を好きでいてくれる人なら嬉しいのに。

「ホント、可愛くなくなってきたな。最初の頃と全然違う」

目を開け、私を恨めしそうに見た。

「それは、こっちのセリ…」

と言い終わる前に、聡士が乱暴に唇を塞いできたのだった。

「ん…、聡…!」

軽く抵抗すると、すんなりと唇を離してくれる。

「お前が静かにしないからだろ。まだ可愛くない事言うなら、もう一回キスするぞ?」

キスが嫌なんじゃないよ。

宙ぶらりんの関係と、ケジメがつかない自分が嫌なの。

どこかで、聡士の温もりを感じたい自分がいるのも確かだから。

「お?やっと静かになったな。おやすみ」

「嫌なんじゃないよ…」

「ん?」

「聡士にキスされるのが嫌なんじゃないよ。おやすみ」

照れ臭さを隠す為に、目を閉じ顔を聡士の胸に埋めた。

「お前、それ反則」

「え?」

私を胸から離すと、聡士は再びキスをしてくる。

「せっかく寝ようと思ったのに、寝かせられなくなった」

「あ…」

そして、また聡士は私を強く抱いたのだった。

私のベッドもよくきしむって、初めて知ったよ…。


< 67 / 138 >

この作品をシェア

pagetop