親友を好きな彼
聡ガラス張りのカフェは、平日の午前中だというのに、かなり混雑をしている。
亜子は二階の奥の席へと急ぎ、私を座らせた。
「注文は後ね。ここなら騒がしくて、話を聞かれる心配はないから、ちゃんと話してくれない?」
「話すけど…。二人は一体、いつの間にそんな話をする仲になったの?」
怪訝な顔を向けると、亜子は呆れた様にため息をついた。
「一言言っておくわ。やましい関係ではないから」
きっぱりと言われ、自分が恥ずかしくなる。
二人の仲を疑うつもりはないけれど、聡士に信用がないからか、万が一を考えてしまった。
「ごめん。実は…」
これ以上は聞かず、今まであった事を全て話した。
今さら、隠し事など出来るわけもないし…。
すると、亜子はさらにため息を深くしたのだった。
「めちゃくちゃじゃない」
「う、うん…」
やっぱりそうよね。
客観的に見れば、誰だってそう思うよね。
「由衣、私が心配しているのはね、聡士くんが本当に由衣を好きなのかどうかって事なの」
「好き?それなら、最初から違うわよ」
一度だって、そんな言葉を言われた事がない。
それくらい、さすがに分かっているつもりだった。
だけど、亜子は首を横に振った。
「だったら何で、私に大翔くんの話をする訳?それに、二人が噂になっているのも知っているのに」
「ねえ、聡士は亜子に、大翔の事をどんな風に話したの?」
「由衣の元彼と、仕事をするのが複雑だって。大翔くんは、自分の友達だけれど、由衣が彼に会う事を相当気にしているみたいよ」
そんな、まさか…。
「だけど、一香とも関係が続いていて、昨日のお昼もホテルに入って行く所を見たのよね?」
亜子に言われ、小さく頷く。
「大翔くんがやり直したいと言った事までは、私が口出す問題じゃないけれど、聡士くんの事は…」
「聡士の事は?」
「関係を清算した方がいい」
言い切られたその言葉に、頭の上に何かが落ちた様な衝撃を受けた。
「清算…?」
「そうよ。でないと由衣が、一番不幸になる」