親友を好きな彼
「え~!!聡士とは無理!?」
家に戻り、さっそく一香に電話をした。
聡士との関係を本当に終わらせる為には、ここにも根回しをしないといけないと思ったからだ。
私たちの関係を知らないであろう一香には、努めて軽く報告をした。
「うん。やっぱり、仕事仲間って感じから抜けられなくて…」
「そっか。二人ならうまくいくと思ったんだけどな」
心底がっかりした様子の一香に、もう聞く事のない質問を投げかけてみる。
「聡士との関係は?最後に聞いた時から、まだ続いてるの?」
ホテルにも行ったものね。
分かりきった内容だけれど、もう一度確認をして、きっぱりと聡士を忘れたかった。
すると、言いにくそうに一香は答えたのだった。
「実は…まだ。今夜も家に来るとか言われて、拒否したんだけど」
ああ、何だやっぱり。
そうよね。
大翔の寝室から、一香の香りがしなくなって、もしかしてって期待をした時もあった。
だけど違っていたらしい。
聡士が一香の家に行っていたんだ…。
今夜もって、私がもう会わないと言ったから、堂々と一香に会いに来るに違いない。
もういいんだ。
これでいいんだ。
「たださ、最近のあいつ、様子が変だったから、由衣とうまくいき始めたのかと思ってたの」
「変て?」
「う~ん。あくまでも想像だけど、私を忘れようとしているというか…」
「忘れる?」
「うん。ずっと想われていたから分かるんだけど、最近ちょっと違ってきてたから」
それを言われて、いつだったか、聡士と抱き合った夜に、朦朧とする意識の中で聞いた言葉を思い出した。
『忘れさせて』
あれは、聡士の本音…?
でも、一香とはまだ続いているし、亜子の言葉も気になるし…。
やめやめ。余計な事は考えないでおこう。
頭を切り替え、大翔の話をしようとして、ふと思った。
そういえば、大翔と聡士は友達だ。しかも学生時代からの。
だとすると、一香も大翔を知ってる…?
「実はね、二年前に彼氏と別れたって話をしたのを、一香は覚えてる?」
「覚えてるよ~。由衣、相当落ち込んでたもんね」
良かった。覚えていた。
そして一呼吸置き、大翔の話をしたのだった。
一香と大翔も、繋がっているはずだから…。
どんな反応をする?
大翔の話を聞いて…。