親友を好きな彼


…ん?

これは、今流行りのJ-POPの歌。

ランキング1位を独走中で、男性ボーカルのラブソングだ。

落ち着いた大人の恋愛って感じで、私も好きな曲。

それが、どこから聞こえるの…?

すると、「もしもし?」

大翔の声で目が覚めた。

いつの間にか眠っていて、聞こえてきた歌は大翔の携帯の着信音だったらしい。

大翔も眠っていたのか、少し寝ぼけた声で私の隣で電話を取っていた。

そして、目が覚めた私に気づいて、優しく頭を撫でてくれるのだった。

こういう仕草は、昔と同じなんだけどな…。

それにしても、こんな夜中に誰?

そう思った時、「一香、こんな夜中に何だよ」

電話が一香からだと分かり、すっかり眠気も吹っ飛んだ。

一香は、大翔にもこんな気軽に電話をかけるの?

大翔は目を細めていて、まだ眠そうだ。

「今ね、琉二と一緒にいるのよ」

携帯から漏れてくる一香の声が、ハッキリと聞こえる。

「琉二と?二人で飲んでんの?」

「そう、二人。聡士と大翔にフラれたから」

そう言って機嫌良く、ケラケラ笑う声が聞こえた。

どうやら、今夜は二人も誘っていたらしい。

思った以上に、みんなは頻繁に会っているのかもしれない。

それを想像すると、自分でも信じられないくらいの嫉妬の感情がこみ上げてくる。

聡士だけでなく大翔にまで、こんな馴れ馴れしいなんて。

「一香、用があるなら早く言えよ。俺、眠たいんだって」

大翔は話を続けながらも、私の頭を撫でている。

そして時々、優しい笑顔も向けてくれた。

「ああ、ごめんね。琉二と話してて、次はみんなで飲もうってことになったのよ」

「いいんじゃない?」

「それでね、さっき聡士にも聞いたら、週末が大丈夫だって言うから週末にしたいんだけど、大翔はどう?」

「俺?無理だわ。週末からかなり仕事が忙しくてさ」

そうなんだ。

でも、ホテルの仕事だもんね。

週末が忙しいのは当たり前か。

すると、一香はがっかりした口調で、

「え~、大翔来られないの?」

そう言ったのだった。

「じゃあ、別の日にしようかな。大翔がいないんじゃ、つまんない」

つまんない?

つまんないって、聡士がいるじゃん!

それに、私にも来てと言っておきながら、ここまで一度も名前が出てこないのはなぜ?

だいがい自分勝手な私は、一香に急激な嫉妬心を持ち、思わず声に出してしまっていたのだった。

「ねえ、大翔。まだ電話終わらないの?」





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