親友を好きな彼
「えっ!?由衣いるの?」
突然の割り込みに、一香だけでなく大翔も驚いている。
すっかり目を見開いた大翔に気づかない振りをして、その胸に顔を埋めた。
「ああ、一緒なんだよ」
動揺を隠す様な言い方をしているけれど、明らかにさっきまでとは口調が違う。
「そっかぁ。ごめん。由衣から大翔との事聞いてたのに…」
「いや…。気にするなと言うか…」
言葉を選びつつ、話しているのが分かる。
大翔のバカ!
何で、そんなに一香にフォローしてるのよ。
それまでの元気の良さがなくなった一香は、「由衣も来て欲しいから、大翔が大丈夫な日にするわ」と言ったのだった。
私がいるって分かった途端、名前が出てくるのね。
大翔がいないと来ちゃいけない?
すっかりふて腐れた私は、意地悪心が芽生えワガママな事を言っていたのだった。
「私だけでも行く。一香とゆっくり会いたいから」
「えっ!?」
その言葉に、いち早く反応したのは大翔だった。
「いいでしょ?ダメ?」
「いいよ~!来て来て!」
すっかりテンションを戻して、電話越しに一香の声が聞こえる。
「分かった。いいよ…」
大翔は''負けた''とでも言いたそうに、渋々許してくれたのだった。
「じゃあね、由衣。お邪魔してごめんね!」
そして、携帯は切れたのだった。
大翔は小さくため息をついて、携帯をテーブルに置くと下着のままキッチンへと向かった。
冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを飲んでいる。
まさか、怒ってる?
私も下着だけ身に着けると、大翔の側へ行ったのだった。
「ごめんね…」
小さく呟く様に言うと、大翔は冷蔵庫にミネラルウォーターをしまい、私へ目を向けた。
「何で謝ってるんだよ」
「だって…」
自分でも驚くくらい、一香にヤキモチを妬いている。
さすがに、あんな割り込み方はなかった。
「変な気を回すなよ由衣」
大翔は怒ることもなく、優しく唇を重ねてくれた。
不思議だね。
変わってるところと、変わらないところがある。
どれも本当の大翔なんだよね?
二年も経てば、人が変わるのは当然かもしれない。
さっきは聡士が頭から離れなかったけれど、もう大翔の事だけを考えて…。
私たちは、もう一度体を重ね合ったのだった。