親友を好きな彼


「えっ!?由衣いるの?」

突然の割り込みに、一香だけでなく大翔も驚いている。

すっかり目を見開いた大翔に気づかない振りをして、その胸に顔を埋めた。

「ああ、一緒なんだよ」

動揺を隠す様な言い方をしているけれど、明らかにさっきまでとは口調が違う。

「そっかぁ。ごめん。由衣から大翔との事聞いてたのに…」

「いや…。気にするなと言うか…」

言葉を選びつつ、話しているのが分かる。

大翔のバカ!

何で、そんなに一香にフォローしてるのよ。

それまでの元気の良さがなくなった一香は、「由衣も来て欲しいから、大翔が大丈夫な日にするわ」と言ったのだった。

私がいるって分かった途端、名前が出てくるのね。

大翔がいないと来ちゃいけない?

すっかりふて腐れた私は、意地悪心が芽生えワガママな事を言っていたのだった。

「私だけでも行く。一香とゆっくり会いたいから」

「えっ!?」

その言葉に、いち早く反応したのは大翔だった。

「いいでしょ?ダメ?」

「いいよ~!来て来て!」

すっかりテンションを戻して、電話越しに一香の声が聞こえる。

「分かった。いいよ…」

大翔は''負けた''とでも言いたそうに、渋々許してくれたのだった。

「じゃあね、由衣。お邪魔してごめんね!」

そして、携帯は切れたのだった。

大翔は小さくため息をついて、携帯をテーブルに置くと下着のままキッチンへと向かった。

冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを飲んでいる。

まさか、怒ってる?

私も下着だけ身に着けると、大翔の側へ行ったのだった。

「ごめんね…」

小さく呟く様に言うと、大翔は冷蔵庫にミネラルウォーターをしまい、私へ目を向けた。

「何で謝ってるんだよ」

「だって…」

自分でも驚くくらい、一香にヤキモチを妬いている。

さすがに、あんな割り込み方はなかった。

「変な気を回すなよ由衣」

大翔は怒ることもなく、優しく唇を重ねてくれた。

不思議だね。

変わってるところと、変わらないところがある。

どれも本当の大翔なんだよね?

二年も経てば、人が変わるのは当然かもしれない。

さっきは聡士が頭から離れなかったけれど、もう大翔の事だけを考えて…。

私たちは、もう一度体を重ね合ったのだった。




< 81 / 138 >

この作品をシェア

pagetop