桜色の雪-君との時間-


……はじめは、軽いお小遣い稼ぎのつもりだった。



1年前の今頃。私はちょうど受験も終わったばかりで、これからの人生には登場しなくても、受験にはこれでもかというくらい登場してくる知識が頭にはまだ豊富につまっていたし、改めてバイトを探すよりは楽かな、という、本当に、軽い気持ちで始めた家庭教師だった。



―――もし、あの頃に戻れるなら。


……あのときの自分を、殴ってでも止めさせる。


このままだと、つらい思いをするぞ、って。





「……じゃあ、向こうで暮らすアパートも探さなきゃだね。一人暮らし、頑張って」



泣きそうな気持ちを、必死に作り物の笑顔で誤魔化して、私はそう言葉を紡ぐ。



「そうなんですよ。俺、全然家事とかやったことないから、今から心配で」



そう言って、鷹雪君は照れたように頭を掻いた。






……そんな顔も、好きだ。




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