203号室の眠り姫
眠り姫
ここは、とある都内の病院。
何の変哲もない病院だったが、ここにある日、奇妙な病人が運び込まれた。
病人の血色はよく、栄養状態も問題ない。目立った外傷も見当たらない。
ただ、
その唯一にして最大の、異常。
少女は眠っていた。
深い眠りにとらわれ、どんな治療を施してもいっこうに目を覚まさない。
植物状態を疑って詳しい検査をしたが、どうも違うらしい。
夢を見ているのだ。
少女の意識は睡眠と目覚めのあいまいな狭間を行き来し、とりとめもない幻想にとらわれている。
医師たちもとうとう匙を投げた。
少女は一般病棟の、いちばん奥の個室に押し込まれるかたちとなった。
とうぜん、このことは病院中に知れわたった。そして少女を訪ねる人間がいないことも手伝って、彼女の素性をめぐる根も葉もないうわさが飛び交った。
しかし、しょせんは代わり映えのない日々に退屈した患者たちの暇つぶし、どれ一つとして核心に迫るものではなかった。
時が流れ、いつからか少女はこう呼ばれるようになった。
眠り姫、と。
何の変哲もない病院だったが、ここにある日、奇妙な病人が運び込まれた。
病人の血色はよく、栄養状態も問題ない。目立った外傷も見当たらない。
ただ、
その唯一にして最大の、異常。
少女は眠っていた。
深い眠りにとらわれ、どんな治療を施してもいっこうに目を覚まさない。
植物状態を疑って詳しい検査をしたが、どうも違うらしい。
夢を見ているのだ。
少女の意識は睡眠と目覚めのあいまいな狭間を行き来し、とりとめもない幻想にとらわれている。
医師たちもとうとう匙を投げた。
少女は一般病棟の、いちばん奥の個室に押し込まれるかたちとなった。
とうぜん、このことは病院中に知れわたった。そして少女を訪ねる人間がいないことも手伝って、彼女の素性をめぐる根も葉もないうわさが飛び交った。
しかし、しょせんは代わり映えのない日々に退屈した患者たちの暇つぶし、どれ一つとして核心に迫るものではなかった。
時が流れ、いつからか少女はこう呼ばれるようになった。
眠り姫、と。
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