ひとり恋 ～マイセルフパラダイス～ （ロングバージョン）

すると今度は、頭の中に、昨夜の電話での室井さんとの会話がよみがえってきた。


「なにも中学校生活イチバンの思い出になる修学旅行で、そんなに怒ることないよね？　……ったく、デリカシーがないってゆーか、先生のクセに年頃の子供の扱い方がなってないってゆーか……」

「でしょ、でしょお？」


“うんうん♪　ヤッパ室井さんだけは、あたしの味方だァ♪”


「先生にとっちゃ何度も経験する修学旅行のうちの一回なのかもしれないけど、生徒にとっちゃ一生に一度っきりの中学校での修学旅行なんだ。それなのに、その状況でデリカシーのないことされたんじゃ、中学の思い出を振り返る度に、セットでイヤな記憶まで思い出さなくちゃいけなくなっちゃうじゃん」


ホントにそのとおりだと思う。

テストのために覚えた勉強の内容とかはスグに忘れてしまうのに、イヤなことほどいつまで経っても忘れないんだ。

たぶんあたしがオトナになって、学生時代に覚えた数学の公式や英単語を忘れる日が訪れたとしても、今日、先生にしかられたことはずっとずっと……あたしがおばーちゃんになっても忘れないだろうと思う。