ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
今そこに、あたしたちの声が思いっきし元気に、わんわんとこだましていた――――



      ×      ×      ×



タタタッ

日本橋を渡り、宿場町へ。


だけど、お宿で休んでいるヒマはない。

続いて港町、屋敷町へと、花のお江戸は八百八町を駆け抜けて行く一人の町娘。


歳の頃なら十五、六。

恋しいお方は今いずこ。


人気役者も顔負けの、凛々しきその面影を胸に抱いて、訪ねたところは芝居小屋。

主にはぐれた子犬さえ、いつかはやさしい懐に帰るその日もあるはずなのに、嗚呼、それなのに、それなのに……。


頬を、ぽっ、と赤らめながら訪ねたところは吉原通り。

そんなところにいるはずがない。


困ったときのお役人頼み。
< 133 / 205 >

この作品をシェア

pagetop