ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
「まぁ、命に別状がなくて骨折だけで済んだのは不幸中の幸いだったのかもしれんな」

「あなた、なにをのん気なことをっ」

「ねぇ、母さん。そもそもなんであたし、病院にいるの?」

「まさか、お前、記憶が……」

「お父さん。お子さんはショックで現在、一時的な記憶喪失の状態にあるのではないかと思われます」

「千賀子、いい? よく聞きなさい。あんたはクルマにはねられたのよ」

「え……母さん、あたし、交通事故に遭ったの……?」

「目撃していたヒトのハナシだと、歩行者用の信号が赤なのに、あんたが道路に飛び出してきたって」


“そっか……あのとき、雨の雫がメガネのレンズに付いて、前が全然見えなかったから、それで信号無視して飛び出したのかも……”


「コレを見なさい。コレを」

「なに、ソレ……?」

母に見せられた“物体”がなんであるのか、あたしには一瞬分からなかった。

だけど、なんか見覚えはある。

毎日、肌身離さず持ってたような気がする。




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