ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
まず先生が鬼になり、クラスのみんなが次々に鬼と入れ替わっていくんだけど、誰もあたしの後ろにはハンカチを落とそうとしなかった。
こーいうのはヤッパ“リアクションで笑いをとってナンボ”のものだと思う。
だから、自分の後ろに落とされたハンカチに気づいて大袈裟な感じで二度見をしたあげく、「え~っ!?」なんて大声を上げて、慌ててバカみたいに必死になって鬼を追いかけて走るくらいのリアクションのとれるヒトの後ろにハンカチを落としてこそ、はじめて盛り上がるレクリエーションだ。
そーいう意味ではリアクション下手で、そのうえアドリブがきかないあたしの後ろに、好き好んでハンカチを落とすヒトがいなかったのも、むしろトーゼンのことだった。
ところが……、
ところがはじまって10分が過ぎたくらいの頃、あたしの後ろにハンカチを落としたヒトがいた。
北条くん。
北条 勝くんが、どこか憎めないような感じのポーカーフェイスで、あたしの後ろを通り過ぎようとした瞬間、ハンカチを落としていっちゃったんだ。