ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
追いつけないと、今度はあたしが鬼だ。
慌てて立ち上がると、彼のあとを追って、輪になって座るクラスのみんなのまわりを走りはじめるあたし。
運動オンチのあたしとちがって、たぶん彼の足ならあたしの追走なんて簡単に降り切ってしまえるはず。
なのに、きっとワザとなんだと思うけど、“走る”というよりは“早歩き”くらいの遅めのスピードで走ってくれる彼。
次の瞬間、グルリと輪になって体育館に座っているクラスのみんなと先生の姿が、一瞬にして眼中から消えた。
そこはもう、あたしと北条くん、ふたりだけの世界になっていた、
……ような気がした。
そのうち、なんとこともあろうにその場に立ち止まってしまう彼。
まさか、そのままそこにじっとしていてくれるなんてハナから思っていないけど、それでも両足のキン肉にチカラを込めて精一杯のダッシュをかけるあたし。
“あとちょっとで追いつけるかも!”