ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
だけど、もう遅い。
It is no use crying over spilt milk.
“覆水盆に返らず”ってヤツだ。
彼の姿はもうすでにあたしの視界から外れてしまっていた。
北条くんから鬼を交替した時点で、あたし的には(A)彼の後ろにハンカチを落とすか、(B)彼以外のヒトの後ろにハンカチを落とすか、という二者択一しかなかった。
だから(A)の選択肢を却下したとなれば、もうクラスの誰の後ろに落とそうがどーでもいいことだった。
……と、ゆっくり目のスピードで走るあたしの目に、あぐらをかいて座る杉田さんの姿が飛び込んできた。
ぽっちゃりボディでカラダが大きいぶん、いやでも視界に入っちゃうんだ。
一瞬、彼女の後ろにハンカチを落としてやろうかと思った。
でも次の瞬間、それはやめることにした。
自分よりあきらかに運動神経の鈍い彼女の後ろにハンカチを落としたあげく、余裕で彼女からの追走を振り切り、そしてまんまとたやすく鬼を交替してしまう。