ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
でもね……、
他のヒトにとってはすごく簡単なことなんだろうけど、あたしには恥ずかしくて……恥ずかしすぎて……“彼にひとこと声をかける”……そんな簡単なことさえも到底できるはずもないことだったんだ。
だいいち、声をかけたとして、いったい何を話したらいいのか、それさえもあたしには分からない。
それどころか、あたしのことなんか、とっくの昔に忘れていてシカトされるんじゃないか、っていう怖さもある。
それならいっそ、1年生のときの少年自然の家のこととか、中体連の応援のこととかも、いわゆるひとつの“青春の1ページ”ってことで、キレイな思い出のままにしておいたほうがいいんじゃないかって思うんだ。
死にそうなくらい恥ずかしい思いをして、あえて危険をおかして彼に話しかけてまで、自分の手で思い出を汚す必要もないと思う。
これ以上、余計なことをするのは“蛇足”以外のなにものでもない。
“言わぬが花”
それこそが今のあたしの心情をピッタリ表現した言葉だと思う。