ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
こんな発想をしてしまうなんて、自分でも“なんて臆病なんだろう……”って、泣きたくなるほど情けなくなるけど……。

でも、あたしはそーいう人間なんだ。


母親が教育熱心だったせいもあるけど、得意なスポーツがあるとか、ピアノが弾けるとかみたいなトクベツな才能のないあたしが、唯一他人に負けない自信があったのが勉強に関することだったし、テストの成績がいいと親がほめてくれるから、もっとほめてもらいたくて、それでイヤイヤというわけでもなく自発的に勉強していたような気がする。

そんなあたしの人生だから、物心ついた頃には、頭の中の大半の部分は勉強のことで占められていた。

なのに北条くんに出逢ってからというもの、いつも頭の片隅には彼のことがあって、ふとした瞬間に彼のことを考えたりすることも度々あった。

実際、昨日も塾帰りの路線バスに揺られながら……、

“今頃、北条くん、なにしてるんだろ……”

……なんてぼんやり考えたりしてたし。


明けない夜がないように、覚めない夢なんてものも存在しない。

あたしにとって北条くんと過ごした1年間は、目を開けたまま見続けた夢であり、そして今は単にその夢が覚めてしまっただけのこと。

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