ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
全身をこわばらせて身構えるあたし。

カラダはカチンカチンに固まって動かないのに、視線だけが定まらず目が泳いでいる。



だけど……、



だけど、まっすぐあたしに向かって近づいてきた店員さんは、あたしではなく、その横にいた中年サラリーマンがスーツの上着のポケットに突っ込んでいた右手首をぐいっとつかんで、そのままひねり上げた。

小刻みに震えるその右手にはケータイがしっかりと握り締められていた。



「ちょっと事務所まで来てもらうわよ」

その言い方がすごく威圧的な感じだった。



「わ、私はなにもやっとらんっ」

でも、なにもやっていないヒトがそんなにうろたえるはずなんてない。顔だって血の気が引いて真っ青になってるし。



「やったかどうか、アンタのケータイを確認すればスグに分かることよ。さぁ、コッチにきなさい」

< 49 / 205 >

この作品をシェア

pagetop