ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
「いやなに、アイツの顔さァ、小学生の頃、俺にヘンなあだ名つけたヤツにソックリだったもんで、ついな」

「え? 北条くんもヘンなあだ名つけられたことがあるんだ?」

「ある日、図書館で歴史の“北条政子”の本を見つけたヤツがいてな……小学生なんて単純なもんだから、その瞬間から俺のことを“政子、政子”って言い出すムカつくヤツがいたんだよ。……ったく」

「そっか……そんなことがあったんだ……」

「まっ、どこの世界にもヤなヤローはいるってこった。それをいちいち気にしてたんじゃあ、世界中どこにも居場所なんてなくなっちまうぜ」

「たしかに、そーかもしれないね」

「アイツ、友達いねぇだろ?」

「え? あぁ、うん」

「だと思った。オレを“政子”って呼んだヤツも友達いなかったもんな」

「フフッ、そーなんだ♪」

さっきまでの不安な気持ちが、まるでウソのように思わず出た笑いだった。


中1のときは席が隣同士だったこともあったから、けっこーいろいろ話はしてたんだけど、彼の小学生時代の話を聞いたのは、今日がはじめてだと思う。


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