ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
親にも打ち明けられないような思春期特有のお悩みも、彼女になら素直に話すことができる。

実際、彼女から学んだことは決して少なくはなかったし。

そーいう意味で彼女は“もうひとりの先生”と言っていいと思う。

教えてくれるのは学校でも塾でも、誰も教えてくれないことばっかだけど……。

一人っ子のうえに、学校にもトクベツ親しい友達のいないあたしにとって、彼女はよき相談相手であり、あたし同様メガネをかけていることもあって実に親しみが持てる女性だった。


「ナンノちゃんさぁ、オンナなら覚悟を決めて、やってみなよ。あたしも、できるかぎり協力するからさ」

彼女はあたしのことを“南野(ナンノ)”と呼ぶ。

「室井さんは人事だから気楽に言うけど、3年生の学級委員には修学旅行っていう大仕事が待ってるんだよっ」

「もーから、そんな先のこと心配してどうすんのよ。それに、大変どころか、修学旅行は学校生活一番のイベントじゃん♪ あたしも行きたいな~♪ 京都の街は綺麗だろうな~♪ 修学旅行は京都が一番よね~♪ 女のコなら、やっぱり京都よね~♪」

……なんて、お気楽に修学旅行のことをアレコレ勝手に妄想しているみたいだけど。
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