三叉路 ~three roads~
接点
午後の授業は眠くて仕方ない。


私はシャープペンシルをクルクル回しながら、日本史の教科書をぼんやり眺めていた。



日常生活では使うことはない単語の羅列が目をチカチカさせる。
教科書読んでいる先生の低い声もやたら眠気を誘う。


いつもならこんな穏やかな日が射す午後の授業でも、眠いなんて思うことなく授業に集中していたのに、最近考え事ばかりで夜はまともに眠れず、今頃になって眠気が襲ってくるのだ。



眠くて頭の中が働かないのに、なぜか郁美の顔や、土橋修の顔だけはやけに鮮明に浮かんでは消えてゆく。



郁美から土橋修に振られたと告げられた日から一週間、私はずっとこんな感じでボーッとしてばかりだった。


恋愛で泣かされる事などなかった郁美の涙にひどく動揺し、土橋修に対して怒りを覚え、郁美の頼み事である“土橋修と会わせる”計画を勢いで引き受けたことにより、私はそのことで頭がいっぱいになり、どのようにして土橋修に郁美が会いたがっている旨を伝えようか悩んでいた。
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