人貸し屋



そんなことはないのだが・・・

と考えていると、男が小さく呟いた



「・・・・・・冗談だ」



目を合わさない男に、小さく微笑む



「アナタの名まえは・・・?」



「・・・俺は、野良猫だったから

 名前はなかった。

 ・・・人間は、クロと呼んでいたが」



その名前が嫌なのか、

クロと名乗った男は不機嫌そうな

顔をしながら言った



「そうですか・・・

 私は零。人貸し屋当主です」



「・・・ありがとう。

 俺を人間にしてくれて」



男は私にそう言って、

屋敷から出ていこうとした



「どこに行く気ですか?」



「・・・・・・わからない。

 ただ、俺は人間になりたかった

 だからここに来た。それだけだ」



人と、関わりたくないのか・・・

なぜか目を合わせようとしない



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