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茅野はゆっくりと、誰のペースも気にせずに、時間をかけて動物を見て歩いていた。
こんな狭い檻に囲われて、仲間と暮らすこともできずに。
“危険”なものは鎖に繋がれて、不自由ばかりで、かわいそうに。
微動だにせずにこちらを見つめるワシと、なんとなく、じっと目を合わせていた。
無感情な凛々しい目付きの中に、なにか見えないかと、探ってみる。
ワシがわずかに首を傾げた。
その時だった。
「きゃあっ!」
「え? なにあれ……」
「あんな動物、いたっけ?」
それほど遠くない場所で、同級生たちが口々に言い合う声が耳に届いた。
振り返ると、ある檻の前でクラスメイトのほとんどが集まって、ざわざわと騒いでいる。
よく熊や猿が入っているような、部分的に低くくりぬかれた形の檻だ。
昔はなにか入れられていたのだろうが、今は『ここには動物はいません』という、なんとも淋しげな看板がかけられていたはずだ。
茅野もさっき横を通ったばかりだが、確かになにもいなかった。
不穏な空気に、不思議に思って近寄ってみる。
人だかりの端から見下ろすと、そこには、思いの外大きな生き物がいた。