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ゾウほどもある巨大な体は、犬のような短い毛に覆われている。
トカゲやワニのような目元や、大きく裂けた口の周りにだけ、爬虫類に似た鱗の部分が見えた。

体に対して大きな足の先には、鉤状の太い爪がある。
その後ろには長い尻尾。
口から覗く、上下の二対の牙。

首が長く二本足で立つ、毛の生えた巨大なトカゲ、というような印象だ。
映画で見た恐竜にも似ている。
しかし決定的に違うものが、その頭と、背中にあった。

ぎょろりと動く目から視線をずらせば、骨張った頭に沿うように、太く捻れた角が伸びている。
そして背中に折り畳まれているのは、想像し得るどの動物にも当てはまらない、コウモリのそれに羽毛が生え揃ったような、翼だ。


見たことのない生き物だった。

だが誰もが、それに似た生き物の名前を、一度は聞いたことがあった。
それはコウモリでも鳥でもトカゲでも、恐竜でもない。
誰かが、ぽつりと呟く。


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