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「……ドラゴン……?」


その瞬間、その生き物の目が、ぐりんと声の方向を向いた。
ひいっ、と声にならない悲鳴。
口元に覗く牙に、嫌でも視線が向かう。

彼らは、無意識のうちに、後ずさっていた。
その生物の視界からできるだけさりげなく逃れようと、砂山が崩れるように人だかりが広がっていく。

その背中に押されて、茅野も、意図しない方向に動いてしまっていた。
錆びかけた柵に押し付けられる。
押さないで、という声が咄嗟に出なくて、人の間にぽっかりと空いた隙間へなんとか潜り込んだ。
そして、一息吐いた時だった。

――どんっ、

背中に誰かの肩が当たって、気付けば柵から大きく身を乗り出していた。
体勢を立て直せない。
「あ、」という声が、勝手に喉から出る。

次の瞬間には、茅野は檻の中へと、転がり落ちていた。


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