執事の戯言

そういってこちらを見た彼の目は、獲物を見つけた肉食獣のように思えた。


「や、やっぱり帰りますね」


今度は本当に怖くなって逃げようとしたけど、手を掴まれ、「待って」の一言を耳元で囁かれた。


ぐいっと引っ張られてよろめき、壁に背中をぶつける。


「痛っ……!」


顔を歪めると、先輩は少し心配そうな顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。


壁に押し倒され、すぐ目の前には今日会ったばかりの男の顔。


「俺ね、入学式のとき、篠崎さん見て一目惚れしちゃったんだ」


長い私の髪を手に取り、キスを落としながら告白された。


「……はい?」


突然の告白に、頭は追い付かなかった。


初めて、告白されちゃった……。


しかも入学式に、初対面の男(ひと)に……!


「ごめんね、急だよね。急に迫られてもって感じだろうけど、俺、好きな子には我慢を知らないみたいでさ」


そう笑いながら言ってるけど、顔が赤い。


「照れてるんですか?先輩」



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