執事の戯言
「えっ……、何?知り合い?」
松浦も人が来るとは思っていなかったのか、動揺を隠せないでいる。
「えっと、知り合いっていうより……」
お嬢様も、俺のことをどう言っていいのか分からないでいるみたいだ。
考えるよりも先に体が動き、気付けばお嬢様を背後から抱き締め、彼女の顎を軽く持ち上げていた。
怒りに身を任せてしまったら、終わりだ。
「この子は俺の“女王様”だから。お前みたいなクソ餓鬼が気安く触れてんじゃねー。喋りかけんな。今後一切だ!」
大人気ないが、仕方無い。
お嬢様が悪いのですよ……?
「なっ……!」
「し、篠崎さん。女王様って……?」
二人とも、急な展開で驚いている。
だが俺はもう、至って冷静な素振りで返した。
「”璃愛“……」
耳元で今まで口に出したことはない呼び名で彼女を呼んだ。
びくりと反応する彼女の反応に、嬉しくて仕方無い。
俺の声で、感じてくれているんだ……。