執事の戯言
唖然と立ち尽くしている男に、俺は追い討ちをかけるように言った。
「俺、今嫉妬心にかられまくってるから、この子にお仕置きしたいんだけど……。見ていたいの?」
かっこいいとか言われても、まだ中学生だ。
ますます顔を赤らめて、走りながら去っていった。
「……はぁ」
何のため息かは分からないが、とりあえず疲れた。
「お嬢様?」
抱き締めていた腕を離し、顔を覗いた。
「……か」
「?」
「優のバカ!バカ執事!」
俺は目を見開いた。
バカと言われたことに対してショックを受けていたが、それよりも、お嬢様の目から涙がこぼれ落ちていたことの方が大きい。
「お、お嬢様……」
泣かせてしまった。