執事の戯言
入学式も終わり、必要事項を伝えられた生徒たちは、まだ見慣れない新たな通学路を帰っていく。
皆が帰る中、私は校門前でいつものように迎えを待っていた。
運転するのはいつも優だから、正直迎えが来るのか分からない。
だって多分今は、“教師”として学校にいると思うから…。
教室での優が私に向ける視線や態度は、今までとは違って、本当に他人…または生徒の一人としての扱いだった。
いつも向けてくる優しさとは違っていたし。
どういうつもりなのか、なんでいるのか、考えても分からない。
「お嬢様、そんなに眉間にシワを寄せられては、せっかくの可愛いお顔が台無しですよ」
ふと聞こえる聞きなれた口調と声。
顔を見上げると目の前にはいつもの黒の車と後部座席を開けて待っている執事の姿が…。