執事の戯言

今日も可愛い……。


走り去る彼女を、見つめていると、なぜか30メートルほどのところで止まり、振り返った。


そして、大きく手を振ったかと思うと、大きな声で「ゆー、だいしゅき!」と叫んで、今度は見えなくなるところまで走っていった。


「……」


ゆっくりとしゃがみこみ、頭を抱えた。


くぅ~~!


可愛すぎだろ!あれはヤバイって!


「大好き」じゃなくて「だいしゅき」辺りが超ドストライクなんですけど!?


うわー、やべぇー。


マジ、なんなの?


俺を殺したいわけ?


いや、超幸せ過ぎて、今なら死ねるかも。


「ちょっと、日向さん、大丈夫かしら?」


「ちょっと、疲れているんじゃない?」


まるで乙女かのようにのろける俺が、通りすがるメイドたちの冷ややかな視線に気づくわけもなかった。



< 5 / 63 >

この作品をシェア

pagetop