執事の戯言
今日も可愛い……。
走り去る彼女を、見つめていると、なぜか30メートルほどのところで止まり、振り返った。
そして、大きく手を振ったかと思うと、大きな声で「ゆー、だいしゅき!」と叫んで、今度は見えなくなるところまで走っていった。
「……」
ゆっくりとしゃがみこみ、頭を抱えた。
くぅ~~!
可愛すぎだろ!あれはヤバイって!
「大好き」じゃなくて「だいしゅき」辺りが超ドストライクなんですけど!?
うわー、やべぇー。
マジ、なんなの?
俺を殺したいわけ?
いや、超幸せ過ぎて、今なら死ねるかも。
「ちょっと、日向さん、大丈夫かしら?」
「ちょっと、疲れているんじゃない?」
まるで乙女かのようにのろける俺が、通りすがるメイドたちの冷ややかな視線に気づくわけもなかった。